木室陽一さんの舞踏
16日に、京島ロビーでの木室さんの舞踏の最終回にお邪魔
しました。
夕方6時。買い物の人通りの多い商店街の一角で静かに舞踏が
始まります。シャッターを開けただけのロビーの空間は、直に
商店街に開かれています。
各地で空き店舗を使ったプロジェクトは多くなったものの、これほど
外に向かって開かれた空間というのも珍しい。
しかし、外と直につながっているはずの空間が、ダンサーの存在に
よって、外の空間と薄皮一枚隔てながら別の時間と空間に変貌して
ゆきます。
ゆっくりした舞踏の動作が、余計にそんな印象をもたらすのでしょう。
この日はお店の中からではなく、お店の前の道を隔てた場所から
舞踏を鑑賞しました。
鑑賞している側も、商店街を通り過ぎる買い物客からみれば、また
不思議な存在として鑑賞される側になってしまう。
みること、みられること、その立ち位置が揺らいで、奇妙な気分に
なってきます。
お店の前を通りかかる買い物客は、舞踏に気がついたり、あるいは
そうでなかったり。気がついた人も、怪訝な顔で通り過ぎる人、
思わずぎょっとして立ち止まる人、「アートなのね」と言いながら
なにやら納得して歩み去る人、様々です。
自転車もたくさん通り過ぎます。たいていは一瞬振り向いて素通り
ですが、時々自転車を停めてじっくりと見て行かれる人もいます。
そんな通行人の表情と、ロビーの中の舞踏を交互に見比べて
いるうちに、いつの間にか公演は終了していました。
後で木室さんに伺ったところでは、
「踊っている最中は、すごく集中しているので、あまり外の空間は
気にならないけれども、やはり自分の動きが外の状況と呼応して
変わってゆくのが解る」ということです。
劇場では状況をなにもかも自分でつくる必要があるが、ロビーでは
状況はすでに存在している。
そこがとても面白いと感じたようでした。